[シン・ゴジラ] 次の日本のスクラップ&ビルドはいつか


注:映画「シン・ゴジラ」のネタバレを含んでいますので、視聴予定の方はご注意ください。

シン・ゴジラを見た。率直に言って素晴らしい出来だった。問題を先送りにして深刻化させる日本社会の欠点と、そこから立ち直る際の団結力をよく描写できていた。じきに口コミで評価が上がっていくだろう。

特徴的なのは「破滅しかかった状況から、皆で協力して立て直す」という物語になっていることだ。これは現在の日本の状況に仮託したものと思われる。財政破綻を防ぐことはもはや不可能であり、近い未来に破滅が訪れる。しかし、破滅してはじめて抜本的な改革ができるようになる。そして我々日本人には、敗戦直後にそうしたようにそれを立て直す力がある――この考え方は現実的であり、老若男女問わず日本人に勇気と自信を与えるものだ。

破滅が迫っているのは財政だけでなく、映画やアニメ・漫画・ゲーム等のコンテンツ業界も瀕死状態だ。映像のプラットフォームはYoutube やNetflix に先を越された。書店はAmazon により壊滅状態に陥り、Kindle Unlimitedが日本でも普及すれば取次の立場も無くなっていく。コンシューマーゲームはスマホに押されて売上が激減した。その代わりに台頭してきたスマホのソーシャルゲームは日本以外では目立った実績を上げられておらず、ガチャなどの射幸心を煽る課金方法が問題となっている。このようにほとんどの領域で外資にプラットフォームを握られつつある。しかしながら、テレビや新聞、出版等の巨大メディアは対抗できるプラットフォームを未だに築けておらず、既存の仕組みにしがみついている。日本のコンテンツ業界を立て直す為には、これらの古いメディアが全て考えを変えるか、倒れる必要があるかもしれない。

このような「敗戦直前」の状況はコンテンツ業界だけでなく、日本の様々な業界に見て取れる。立て直す為には一度大きな危機に瀕するするしかないというのも同じだ。シンゴジラ劇中にあったとおり、「スクラップ&ビルド」しか解決策はないのだろう。日本は今スクラップに差し掛かっており、我々が考えなければならないのはビルドのあり方である。ポケモンGOのような欧米的やり方ではなく、日本独自のあり方を考える必要があるだろう。

私は先日(7月30日)、31歳になった。私の世代は、バブルを経験しておらず、ずっと不況の中で生きてきた。好景気や成長等は単なる歴史的事実であり、全く実感が伴わず、従って感動もない。好き勝手に借金を増やして後の世代にそれを押し付けて死んでいく老人たちを恨みもした。とにかく退屈で、虚しく、生きがいの感じられない世の中を生きてきた。しかし後数年で、「日本の再生の物語」の役者の一人になれると思うと、こんな時代に生まれてきたのも悪く無いと考えるようになった。シン・ゴジラは、私のような若者にそれを気づかせてくれた。ゴジラにそれほど思い入れがない今の若者にもお勧めの作品である。

矢口は感情移入のしにくい主人公である。正義感は持っており、自分なりの意見もあり決断もできるが、実行は現場に任せきりで、彼自身のビジョン(日本をどうしたいのか)も見えてこない。これは「日本が破滅の危機を乗り越えた後、どうしていくべきか」を考えることを、感情移入のしにくい主人公を置くことで聴衆に促しているのだと私は考える。日本人は危機には強い。今回も危機を乗り越えることはできるだろう。ただ、我々――特に若者たちは――「危機を乗り越えた後どうしていくべきか」も考えた上で行動すべきだと思う。矢口が言うように、10年後の日本を支えていくのは、今の若者達なのだから。

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jiyu

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